本研究室では、鉄筋コンクリート造建築物の耐震性能に着目して、以下のカテゴリーに大別される研究を行っている。
- 建築物の耐震性能評価手法および耐震補強手法の開発に関する研究
- 次世代型耐震性能設計法に関する研究
- 建築物の耐津波性能評価手法に関する研究
- 耐震実験手法に関する研究
- 地震および津波により被災した建築物の被害調査および関連調査研究
Last updated at 2016/10/15
トピック1. 建築物の耐震性能評価手法および耐震補強手法の開発に関する研究
トピック1では、既存建築物あるいは被災建築物を中心として、その耐震性能を精度よくかつ簡便に評価する手法を開発している。その代表的なものとして耐震診断、残存耐震性能評価などが挙げられ、性能を向上したり回復したりするための補強工法や補強効果についても検討を行っている。
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トピック2.次世代型耐震性能設計法に関する研究
トピック2では、性能規定型の耐震設計を志向する建築物の設計法確立を目標として、そのために必要となる構造解析手法、修復コスト算定法など、多岐にわたる研究を実施している。
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トピック3.建築物の耐(対)津波性能評価手法に関する研究
トピック3では、津波襲来時に建築物に作用する津波荷重や、船舶等の津波漂流物に対する設計法の確立など、津波避難ビルに代表される建築物の耐津波安全性に関する研究のほか、津波被災建築物の復旧状況の調査など、建築物の津波防災に関する建築構造分野に重点を置いた研究を実施している。
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トピック4.耐震実験手法に関する研究
トピック4では、耐震実験手法の高度化を目的として、実地震時に生じる応答を模擬しつつ加力実験を行う手法や、縮小試験体を用いた実験により得られたデータを活用する手法などを検討している。
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トピック5.地震および津波により被災した建築物の被害調査
自然地震は言うなれば非常に大きな振動台実験であり、我々に色々な情報 -建築物はどのように挙動するのか、なぜ壊れたのか、壊れなかったのか、まだ地震が生じていない地域の建築物の何に着目し耐震性能を評価すべきなのか、等々-を与えてくれる。この観点から、当研究室では被災地域の現地調査を実施してきた。今後の地震対策を目的として現地調査で得られたデータは、耐震性能と建築物の被災度の関係を明らかにする研究等に用いられている。最近に被災地域の現地調査を行った地震は以下の通りである。
URM壁を有する鉄筋コンクリート造建築物の耐震性能に関する研究
東南アジアや南米などで発生した被害地震では、無補強組積造壁(URM壁)を有する鉄筋コンクリート造建築物の被害が生じている。特に、高密度集積都市などではリスクレベルが高まるため地震防災の観点から被害の防止策を講じることが急務である。しかし、地震活動が活発ではないと考えられてきた地域では、いまだに耐震設計がなされていない建築物が数多く存在している。特に、URM壁を間仕切壁や外壁に用いた鉄筋コンクリート造既存建築物が被害を大きくしており、これらを対象に、地震被災前・後の耐震性能評価、性能向上手法の開発を目的とした研究を進めている。
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既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断・耐震補強に関する分析・研究
1995年10月の「建築物の耐震改修の促進に関する法律」制定後、既存公共建築物を中心に耐震診断および耐震改修が精力的に実施されている。そこで既存建築物の耐震性能および補強計画の全国的傾向の分析等を行うとともに、その評価手法や判断基準が明確でないがゆえに診断者の判断に依存しがちな現行の耐震診断手法に潜在する問題点を抽出し、より高度な耐震診断手法の開発に向けた検討を行う。
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被災鉄筋コンクリート造建築物の残存耐震性能評価法
地震により被災した鉄筋コンクリート造建築物の再使用の可能性を判定し、復旧・復興に役立てるため、被災後に建築物に残存する耐震性能を部材に表出するひび割れ幅などから算定する手法を開発している。本研究の成果は、日本建築防災協会「震災建築物の被災度区分判定基準および復旧技術指針」に取り入れられ、実際の被災現場にて活用されている。
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非構造部材の耐震性能評価
建築物に耐震設計上許容される変形に対して非構造部材が構造物の変形に追従できない場合,地震による構造物の安全性が保たれていても,非構造部材の損傷によって建築物全体の安全性や機能性が損なわれることになる.近年,建築物全体の耐震安全性や機能性を維持するために,非構造部材が構造体への変形追従性能を有するように設計されるようになってきたが,どれだけ変形追従性能が向上しても地震後の残留変位が大きい構造体では非構造部材に目地ずれ等の変形が残留するため,非構造部材が担っていた耐水性・気密性などの機能性を損なう可能性がある。地震時の建築構造物の応答をふまえながら,修復性・機能性の維持を目的とした非構造部材の耐震性能評価について検討を行う。
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偏心建築物のねじれ応答性状に関する研究
現行の規定では耐震補強要素の平面的な偏在程度は弾性剛性に基づく「剛性偏心」により規定されているが、部材が降伏し剛性低下が生じる建築物の終局強度時には「剛性偏心」よりも耐力的な偏心である「耐力偏心」が建築物の応答に対して大きな影響を与えると考えられる。そこで「剛性偏心」・「耐力偏心」が建築物のねじれ応答に与える影響を検討している。
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隣接する建築物の衝突および連結がその応答性状に与える影響に関する研究
過去の地震のおける構造物被害の要因の一つとして、隣接建築物間の衝突が報告されている。慣用的にしばしば近接建築物同士を連結する手法が用いられているが、建築物の衝突がその応答性状に与える影響、建築物の連結による耐震性能改善効果、連結部の具体的な設計手法については必ずしも明確ではない。そこで建築物の衝突、連結がその応答性状に与える影響を解明することを目的に解析的研究、理論的検討を行った。
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スペクトル法を用いたRC造建築物の残留変位推定手法に関する研究
構造物の耐震設計において安全性だけでなく修復性にも配慮した設計が求められるようになり,修復性を確保するために残留変位を制御する手法が有効な手段として考えられている.本研究では,これまで非線形時刻歴解析によらなければ推定できなかった残留変位について,応答スペクトルによる簡便な推定手法に時刻歴解析同様の物理的意味を付与させた新たな残留変位推定方法の開発に取り組んでいる.
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実被害調査に基づく津波荷重評価に関する研究
津波に強い建築物を構造設計するためには、建築物に作用する津波荷重を定量的に評価し設計荷重に適切に反映する必要がある。しかしながら建築構造の分野では津波被害の定量的調査や津波荷重の評価に関する研究は極めて少ないのが現状である。そこで、実被害調査に基づき、津波を経験した構造物の耐力とその被害程度を比較し、設計用津波荷重の妥当性を検討する。
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サブストラクチャ・オンライン地震応答実験の精度向上に関する研究
サブストラクチャ・オンライン地震応答実験は、載荷実験とコンピュータによる数値解析を併用して構造物全体の地震応答を模擬する実験手法であり、載荷実験で得られた履歴特性を解析部分にリアルタイムに反映し得る点に重要な特徴がある。しかし、従来のサブストラクチャ・オンライン実験では載荷実験対象以外の履歴特性はあらかじめ数学モデルに置換するため、その履歴特性が明確である構造物や、弾性範囲に留まる構造物に対しては有効であるが、履歴特性が明確ではない場合には、上記の利点を十分に活かせていないのが実情である。そこで、本研究では実験から得られる履歴特性を、パターン認識手法の一つであるニューラルネットワークを用いリアルタイムで解析部分に反映する手法を提案し、検討を行っている。
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